バレンタインデーに胸をときめかせたのは随分昔のことです。若い頃、特に十代の頃に、好きな女の子からもらったチョコレートは、本当に甘かったですね。
結婚してからは、僕にチョコレートをくれるのは妻だけです。また、会社は外資系なので、あのバブルが去ってからは義理チョコを個別に配ってくれるような女子社員もいません。わが社のバレンタインデーは全く普通の日と変わりません。
バブルの頃は、義理チョコのお返しのホワイトデーのプレゼントなどを考えたりしましたね。確かに懐かしいイベントでした。いまではまとめて一箱買ってきて一粒ずつ配る人がいることはいます。
それで思い出したことがあります。このことは忘れられないですね。バブルの頃だったかな、ある年に派遣で働きに来ていた女性が気を効かせて、バレンタインデーに同じチームのみんなのためにチョコレートを一箱買ってきてくれたのです。そういった場合、箱を開けて適当に置いておくか、周りの女子社員に頼んで配ってもらうか、自分で配って回るのが暗黙のルールというか、そうなっているのです。その女性はそういうことを知らなかったので、課長に直接、その大きなチョコレートの箱を渡したのです。旅行のお土産で買ってくるチョコレートの箱と同じ大きさでしたね。
しかし、いくら待ってもそのチョコレートは皆に配られることはありませんでした。どう考えても個人に対してのプレゼントとしては大き目のそのチョコレートを、その課長は何を間違ったか、自分個人へのプレゼントと勘違いしてしまって持ち帰ってしまったのです。
当時はバブルでしたが、それでもそのチョコレートは個人へのプレゼントとしては大きすぎるものでした。これは全く想定しなかったことで、ある意味で事件でした。一番かわいそうだったのは、それを渡した当の本人ですね。想定外の出来事だったはずです。しかし、課長へは何も言えませんよね。
今でもたまに、あのチョコレートがどうなったか、その不幸な運命を思い出すこともあります。あれは、バレンタインデーという特別な日が生んだ事件でした。普通の日に、あの大きさのものを自分だけへのプレゼントと思う人はまずいないと思うのです。いろんな意味で、バレンタインデーは男性の冷静な判断を狂わせるのですね。