初めてバレンタインデーにチョコレートをもらったのはいつだったのか、今では憶えていない。それでも、小学3年生の頃からほとんど毎年チョコレートはもらっている。30歳を過ぎた今でも、一年で一番ドキドキする一日はバレンタインデーだ。職場に行っても朝からそわそわして仕事にも手がつかなくなる。別に職場に好きな子がいるわけでもないし、誰かからチョコレートをもらってその後の展開に期待するわけでもない。それでも、なんとなく落ち着かない一日なのである。

そんな特別な一日の中でも、とくに人生において忘れられない経験がある。高校2年生の時である。私は当時男子校に通っていた。高校生という多感な時期に男子だけの生活というのは酷な話である。電車通学だったので、一緒に学校に通うのも同じ高校の友人。学校にはもちろん男子しかいない。そして、下校の時も男だけ。とにかく女性と話をすることができなかった。彼女を作るとかそんなレベルの話ではない。女性と話をする機会もほとんどないのだ。

でも、それは女子高にも同じことがいえる。女子高も女子しかいないので男子と話をしたいはず。そんな需要と供給を満たすのが目的かどうかはわからないが、一年に一度だけ私の高校と近隣の女子校とで交流会を開いていたのだった。それが、毎年バレンタインデーの日。隣の女子校生が、私の高校に来てゲームや話などをするイベントがあった。参加はもちろん自由であり、私も高校2年の時は友人を誘って参加した。ゲームやクイズなどをしてだんだんと打ち解けていくようになった。しかし、私は恥ずかしがり屋だったため、女性と会話をすることができなかった。もちろん気になる子はいたが、その子と話をしようと思うだけで意識してしまって会話が続かなくなってしまった。

そうこうするうちに、メインイベントのチョコレートタイムになってしまった。女子から男子へチョコレートを渡すのだ。当然自分が気に入った男子へ。その瞬間のドキドキは今でも忘れない。でも、私はだれにもチョコをもらうことはできなかった。

その時の泣きたいくらいの悔しさも、今ではとても懐かしい。