想い出のバレンタインと言えば、今から10年ほど前のバレンタインの事になる。当時、知り合いの方から紹介を受けてある女性と交際を始めた。

当時、筆者は40歳近かったのに独身で付き合っている人も居なかった。一方、彼女の方も年齢は筆者より10歳も若いが30歳近く、付き合っている人も居なかった。

お互いに結婚を前提とした交際だった。当時の筆者は管理職になったばかりで仕事に追われていて、毎晩会社を出るのは午後9時過ぎ。

自宅と職場の往復で休日は疲れが出て寝てばかりという生活だった。これではなかなか交際する相手に出会ったりする機会などない。

他方、彼女は小学校の教員だった。教員と言うのは傍で見るよりもずっと忙しく、本来の仕事の他に雑用も多い。筆者と同じく、職場である小学校と自宅の往復に終始しており、ほとんど異性と交際した経験が無いと筆者に話していた。

つまり、お互いに交際相手が欲しい、一生の伴侶が欲しいと願っていた時期に出会った訳だ。筆者は彼女の率直で飾らない、そして苦しいことがあってもめげずに、いつも前向きに努力する姿に魅かれるものを感じた。彼女も、筆者のように女性慣れしていない男性の方が却って新鮮で、付き合っても感じが良いと言ってくれた。

そんな二人が付き合い始めてから半年ほど経った時に迎えたのがバレンタインデイだったのだ。この時も、筆者は仕事に追われていて彼女と会っている時間を作ることさえ難しかったのだが、彼女の方からぜひ2月14日に会って欲しいと言って来たので時間を割いて夜に会った。すると、彼女は手作りだと言ってアップルパイをくれた。彼女は出会った時から洋菓子作りが趣味だと言っていて、特にアップルパイは自信があるから是非家に帰って食べて感想を聞かせて欲しいと言った。

そこで、早速自宅に帰って食べてみると何やらおかしな味がする。どうやら砂糖と塩を入れ間違えたような感じだ。その後、彼女に食べた感想を聞かれたので、ちょっと独特の味がした、と答えると彼女は察して「時々調味料を入れ間違えるの、御免なさい」と謝罪した。けれども、そんな彼女の率直さが好ましいと思い、その後も交際を続けて結婚に漕ぎ付ける事が出来た。筆者にとって忘れられない想い出のバレンタインだ。